私たちの網膜は、赤・緑・青の3色を感じる能力があって、その刺激の強さによりさまざまな色の判別や認識をしています。
色覚異常とは一般的に赤緑色覚異常と呼ばれていますが、これは赤が緑に見えるということではなく、赤と緑の判別ができない病気で、遺伝による先天色覚異常と視覚系の障害によって生じた眼の疾患に伴う後天色覚異常があります。
■判別が困難な具体例
赤緑色覚異常では、例えば赤い紅葉と緑の楓の葉、枝が同じ色に見えたりします。
このように区別しにくい色の組み合わせを混同色と呼び、「赤と緑と茶」、「ピンクと水色と灰色」、「緑とオレンジ」などがあります。
- 鉄道やバスなどの色分けしている路線図の区別がつきにくい。
- 夜間の点滅信号などの色がわかりにくい。
- 目立つ「止まれ」などの赤い標識が視界にはいってこない。
- 青と思って買った洋服が実際は紫だった。
混合色の例
赤・緑・茶
ピンク・水色・灰色
緑・オレンジ
■色覚異常が起こりやすいとき
- 疲れて判断力が低下している場合や短時間で瞬時に判断しなくてはならないとき。
- 輪郭線や境界線がなく色の違いで識別しなければならないとき。
- 彩度が低く対象が小さいとき。
- 照明が暗いとき。
■先天性色覚異常の原因について
人間の性を決定する性染色体には、X、Yの二つがあり、男性はXY、女性はXXの組合せになっています。
色覚異常の遺伝子はX染色体にあり、劣性遺伝するので、男性の場合はその染色体に色覚異常の遺伝子があれば色覚異常を発病します。
女性の場合はX染色体が2個あるので、その両方に色覚異常の遺伝子がある場合に限り色覚異常となります。1個のX染色体にのみ遺伝子がある場合には発病はしませんが、保因者になります。
このように、X染色体性劣性遺伝という遺伝形式であるため男性に多く、女性では500人に1人程度と比較的まれなのに対し、男性では20人に1人くらいと高頻度にみられます。
このように、遺伝形式で発症する病気のために、先天色覚異常に対して現在有効な治療法といったものはありません。
日常生活において、「いかに病気とうまく付き合って行くべきか」、当院では患者様からのご相談をはじめ、ケアやサポートに積極的に取り組んでおります。
■色覚異常の社会生活
以前、社会生活の上での色覚異常については「理系の仕事はできない」「運転免許が取得できない」などがありました。
しかし現在は、色覚異常者は異常の程度に応じた色の世界を持ち、日常生活を不自由なく送れると広く認知され普通免許も取得が可能です。
しかし、微妙な色の違いや色彩感覚を必要とする職種では就業できないケースもあり、運輸関係や人命に関する職種などは色覚異常による制限が多いのが実情ですが、近年の色覚異常の社会認知の広がりによって以前と比べて職業選択もだいぶ緩和されるようになりました。
■色覚異常は支障なく生活が送れます
人にはそれぞれ個性というものがあり、色覚異常もひとつの個性と考えましょう。
色覚異常の人は独自の色の感覚があり、色の間違いやすさは色覚異常者本人が自覚し注意して生活することと、周囲の人々の理解によって多くの場合は解決できます。
どの色が見えにくいのか、など自分の色覚異常がどの程度かをしっかりと理解しておくことで日常生活も健常者と同じように過ごすことができます。
お子様には明度差がついて見やすいものを選んだり、学校生活では先生に事情を説明し配慮をしてもらうようにしましょう。
色覚異常は周囲の人の理解が深まれば決して特別なものではなく、ごく自然に生活することができます。