網膜動脈硬化症とは、全身に動脈硬化が起こることで、それが網膜にまでおよび発症する疾患です。やっかいなのは網膜動脈硬化症になっても、自覚症状を感じることはほとんどない点です。そのため、定期的な検査が欠かせません。
診断は、目の網膜を眼底カメラや眼底鏡にて眼底検査で行います。
網膜動脈硬化症の治療は、眼底所見を説明し、原因となる「高血圧」、「高コレステロール」に対して内科的治療を中心に行って、これ以上動脈硬化が進行しないように生活指導なども含まれます。
■網膜動脈硬化症の種類
■網膜動脈閉塞
網膜動脈閉塞とは、網膜動脈が詰まり、血液が網膜に行き渡らなくなる病気です。
血液の供給が途絶えた網膜の細胞は、酸素不足に陥り細胞は死んでしまいます。
高齢になるほど起こりやすくなり、加齢による血管や血液の変化が基礎にあると考えられます。糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、心臓弁膜症の人は起こる率が高くなることが知られています。主な診断病名としては網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞があります。
■網膜静脈閉塞
網膜静脈閉塞とは、網膜静脈に血栓ができて、血液の流れが悪くなる病気です。
血液が血管外にあふれ出して、網膜に出血やむくみを引き起こします。
多くの場合、高血圧や動脈硬化などが原因で起こります。
発症は60歳代以上に多いですが、40~50歳代と比較的若い年代にも見られます。
主な診断病名として網膜中心静脈閉塞、網膜静脈分枝閉塞があります。
眼底の中心にある黄斑部の網膜に孔(あな)があく病気です。黄斑部は物を見るための中心であるため、黄斑円孔になると非常に物が見えにくくなります。
高齢者に多い病気ですが、目の打撲などで若い人にも起こることがあります。
多くの場合、「物がゆがんで見える」症状から始まり、よく「すぼんで見える」「吸い込まれるように見える」と表現されます。
視力は初期には比較的良好ですが、進行するにつれて下がっていき、最終的には0.1~0.2程度まで低下します。
早めの手術による治療が必要になります。
当院では、眼底検査とOCT(網膜光干渉断層計)による精密検査が可能です。
「物がゆがんで見える」などの症状が気になる方は、一度検査を受けることをおすすめします。
眼球の網膜の前に膜が張って黄斑がそれに遮られて見えにくくなってしまう病気です。
50歳、60歳代に多く、女性に多い傾向があります。初期には、網膜血管が蛇行しますが膜が透明のために視力など正常で自覚症状はありません。進行すると、視力が悪くなり物が歪んで見えたり、大きく見えたりもします。
加齢などが原因となり、硝子体が収縮して、網膜と硝子体が癒着している部分が引っ張られて網膜の弱いところに裂孔(きれつ)が生じ、この孔を通して液化した硝子体が網膜に入ると網膜剥離になります。
飛蚊症(明るいところで蚊のような虫や糸くずのようなものが飛んで見える)や光視症(暗い場所で目の中にフラッシュのような閃光が走る)、視野が狭くなるといった自覚症状があります。
眼底に位置する網膜の細胞が、徐々に萎縮して、視力や視野の障害が進行していく難病です。進行性の病気で、網膜の視細胞(杆体機能の低下)が侵されて、夜盲を来します。ほぼ両方の目に起こるもので、視野が少しずつ狭くなり、長い経過をたどって視力低下(錐体機能の低下)が起こってきます。
この病気は視力を失うこともありますが、個人差があるため、高齢になってもある程度見えている人もいます。
症状の現れ方は一定ではなく、周囲から見えなくなる場合や、見えない部分が点在するなど実にさまざまな自覚症状があります。